「カヤックは膝と腹筋の引きつけで操作するものだから、とにかく膝を内側にしぼって使うことを意識して!」かなり知られているカヤックの基本だけど、実は「膝をとにかく意識し続ける」だけでは本当に大事なことは習得できないのかもしれない。
カヤックと接している最も大きな筋肉は足の付け根から膝にかけての大腿(太もも)の筋肉。これは誰がなんと言おうと変わらない事実。だからカヤックもこの最も大きな筋肉のパワーをうまく使えるか?がキーポイントになってくる。

このでっかい筋肉を動かす上で支点になる場所は
「膝」。だから、「常に膝を意識してカヌーを動かそう」というアドバイスがよく行われる。そこを意識すれば、結果的に骨盤のたった良い姿勢になり、上半身の力も抜け易い。これは間違ってはいないし、私もそうしたアドバイスを何度もしてきた。
だけど、ここに人間のメンタルが関わってくると、膝を入れ続ける法則は簡単に崩れてしまう。
「力んだ瞬間や体勢が崩れた瞬間、焦った瞬間」などの時、殆どの人が膝を抜いて足を突っ張ってしまう傾向がある。
「焦った瞬間」の代表格はロールの時。カヌー歴がそこそこあるのにハンドロールが苦手。クリーク艇ではハンドロールが出来ない、というような人は、多分起き上がる瞬間に
「膝というよりも足先」に力がいっています。実は恥ずかしながら私もクリーク艇でハンドロールが微妙なパターンに含まれていました。
次に
「力む瞬間」についてですが、これは全てのカヤック操作に当てはまります。
ブーフ、スイープストローク、スポットに落とされそうなときのフォワードスロトーク。
例えばブーフでは、まるでエアスクリューをやる時のそれのように、足先と腰を前に出してボートを押し出そうとする傾向が中級者までによくみられる。この方法だと気持ちだけは前にいくけど、ボートは決して前に飛んでくれない。これもブーフストロークと同時に膝を入れる意識を持つようになれば、
ボートと体が一体となって飛ぶ感覚がもてるはずです。これはフォワードストローク毎に膝を入れる練習でも、すぐにその有効性が分かるはず。
また、フリースタイルカヤックでいうとブラント、カートなど技の瞬間の時も膝を抜く傾向があります。
例えば
ブラントで膝が入っているかどうかのバロメーターが実はとても分かり易い。
目線が前を向いているか(あっち向いてホイしていない)で判断出来る。

こういうカッコいいブラントが出来ない人は、バウを入れる瞬間に膝を意識してみましょう。必ずこういう前向き目線のブラントになります。クリーンブラントも同様です。後ろを向いてしまう人(私もそうだった)は膝が抜けています。
カートホイールが続かない症候群の人もやはり膝です。

写真のように2エンド目のスターンを入れるときに、膝が抜けて足先に力が行きがちですが、こうすると、回転方向へのリードが不十分で3エンド目が必ず遅れる。※これは静水カートがテキメンに理解しやすい。
次に憧れの
マックナスティ
これもバウ先を踏み込みたい、という意識があるのので、足先に力をいれがちですがNGです。
そんな小さな筋肉でボートは沈みません。足先に力がいくと、上半身の力に頼るしかなくなるので、姿勢も悪くなるという二重苦が発生します。あと、応用の「強烈に勢いをつけて踏む」という行為も足先メインでは出来ません。
ということで、
「膝を入れ続ける意識だと、逆に本当に必要な時に膝が入りにくい」ということが理解できたかと思います。
10年経っても気付かない人は気付かない、この法則への対策・・・
それは
「動きのあるときだけ膝を意識する。」でOK。
ロールをする瞬間、ブーフやブラントを打つ瞬間だけ100%明確に膝を意識してみる。これだけでえらい違いを体感出来るので、あとは習慣になるまで意識し続けるだけ。
停滞していた?カヤック技術がかなりの速度で進んでいくはずなので、是非お試しあれ。
ちなみに、本当にカヌーが巧い人達は
「膝はそんなに意識してないなあ。」などと言う傾向がある。笑
これは彼らが巧くなる過程の中で、膝をきっちり意識する修練を積んでいて、無意識でも膝が入れられている、という土台の上に成り立っているものなので勘違いは御法度です。そんな巧い人達も「昔は膝を意識していた」ということを必ず言っている。誰がなんと言おうと一番デカくて使える筋肉は太ももなのです。
ちなみに、個人的にも動きの中での膝が意識出来るようになったら、最終的には
「膝をいれつつ拇指球で押さえる」が正解だろうなあ、と思っています。
これはまた別の機会に^ ^